米消費者が「バーキン」の販売手法に訴訟している件について
2024.05.10
こんにちは!
retro.jpバイヤーの堀です。
今回は、2024年3月19日(現地時間)米国カルフォルニア州の消費者2人がバーキンの販売手法について、訴訟をしている件についてです。
参照:Bloomberg
参照:ClassAction.org
- ・原告2人が主張する違法性とは何なのか?
- ・対するエルメス側の回答はどうなのか?
富の象徴とされる「バーキン」を巡るホットなニュースです。
少し前のニュースだったのですが、争点が気になり調べてみました。
反トラスト法に違反と主張
原告はティナ・カバレリ、マーク・グリノガ氏の2名。
ティナ・カバレリ氏の話によると、エルメスでバーキンを購入するためには「靴、スカーフ、ベルト、宝飾品、家庭用品」などの他エルメス製品を「数千ドル」購入するよう「強要」されたと主張しており、このような「抱き合わせ販売」による不公正な取引方法は「独占禁止法(反トラスト法)」に違反しているとして告発しています。
マーク・グリノガ氏も販売員より同様の案内を受けたと主張しており、原告側は不法に得たすべての金銭の返還を求める損害賠償請求と、エルメス側にこのような慣行を禁止することを裁判所に要請しました。
また、自分たちを代表してバーキンを購入するためにエルメスの他製品の購入をするように勧められた米消費者を募り、集団訴訟を起こす予定だと明らかにしています。
その他にもエルメスの販売員に対する手数料体系にも振れており、エルメスの販売員はバーキンを販売した場合は手数料を支給しないが、バーキンを除いた付随的な製品を販売した場合は3%の手数料を支給し、バーキン以外のバッグは1.5%の手数料を獲得しているとして、販売員はバーキンを利用して他の製品を購入するように指示を受けていたと指摘しています。
この手数料率については知らない部分でしたので、非常に興味深い内容でした。
- ✅手数料(インセンティブ)に関しての解釈
- ・無し:購入制限製品のバーキン、ケリー、ピコタンロックなどの製品
- ・3%:靴、スカーフ、ベルト、インテリアなどのバッグ以外の製品
- ・1.5%:購入制限がないエルメスのバッグ製品
抱き合わせ販売とは、「相手方に対し、不当に、商品又は役務の供給に併せて他の商品又は役務を自己又は自己の指定する事業者から購入させること」とあります。
参照:BUSINESS LAWYERS 「抱き合わせ販売の公正競争阻害性はどう判断されるか」
抱き合わせ販売は、顧客の選択の自由を妨げるおそれがあり、価格、品質、サービスを中心とする能率競争の観点から、競争手段として不当である場合にも、不公正な取引方法に該当し、違法となります。
また、これに従わなかった事業者を団体から不当に除名したり、差別的に取り扱うことで、事業活動を困難にさせる行為も禁じられています。
公正取引委員会がその販売方法を不当と認めた場合、違法な行為として、「当該行為を差し止め」などを命じられます。
尚、「抱き合わせ販売」を含め、「不公正な取引」として他にも16種類の取引が指定されています。
- ✅不公正な取引方法(例)
- ・不当廉売(ダンピンク):仕入れ値以下で商品を売り続ける行為
- ・不当顧客誘引:誤解させたり欺いたりして商品やサービスを購入させる行為。誇大広告
- ・不当高価購入:商品やサービスを本来の価値よりも高い価格で購入させる行為
- 参照:その他の不公正な取引方法16種はこちら
このことから「福袋」のような販売手法もやり方次第では「不公正な取引」に該当することになります。
不公正な取引に共通していることは取引相手が不利益を被るような取引は禁止しているということです。
尚、「抱き合わせ販売」と似たような言葉で「セット販売」というのがあります。
抱き合わせ販売とセット販売の違いは、組み合わせる商品や役務が密接に関わっているという点です。
- ✅セット販売の例
- ・ドラムセット:太鼓とシンバルを単品販売せず、まとめて販売(個別購入はできない)
- ・ホームオフィスセット:ノートパソコン、デスクチェア、デスクランプなど、在宅勤務用に、必要な家具やアクセサリーをまとめて販売
- ・料理キット:レシピに必要な材料や調理器具のセット販売
- ・抱き合わせ販売は、顧客に関連性のない商品を一緒に販売すること
- ・セット販売は、顧客が関心を持つであろう商品を一緒にパッケージ化して販売すること
関連性のない商品という点で考えると、スカーフはハンドバックの持ち手に巻いて使用する場合もあるので関連性がないとは言えないです。
また、アクセサリーや衣類もファションのトータルコーディネートとして考えれば、関連性がないとは言いにくいお品物です。
尚、エルメスはバーキンを個別販売しないとは言っていません。
あくまでも消費者側が自身を優遇してもらうために他の商品で購入実績を作り、エルメスに認めてもらおうとしているに過ぎません。
ティナ・カバレリ氏の主張通り、バーキンを買うために他のお品物を数千ドル買うことをエルメス側が強要していたのなら、原告側が不要な製品を購入することで不利益を被っておりますので、違法な行為と言えると思いますが、販売員が強要していたことがわかる録音データでもない限りは、証明が難しいと思われます。
買取店の査定士をやっているとお客様よりエルメスでは購入実績を積み上げていかないとお目当てなお品物は買えないことは何度も聞いておりましたので、それが当たり前のことと思っておりました。
ですが、このように異議を唱える人が何人も集まれば、エルメス側も今の販売手法で堂々と続けることは出来なくなるのかもしれません。
自社製品の価値を高めるためにもエルメスがやっていることは、理にかなっていると思いますが、度が過ぎると消費者も黙っていないということですね。
今回の件でエルメス側は、原告らが「反競争的・抱き合わせ行為」と呼ぶような商行為はしていないと否定しています。
エルメスの最高経営責任者(CEO)アクセル・デュマ氏は、ブティックは潜在的な購入者を精査し、完売したハンドバッグは「本物の」顧客にのみ販売していることをかつて明らかにしたと報じられています。
続報があれば、また追記していきたいと思います。
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