意外と知らない高級時計を高く売るための正しい保管方法【買取のプロが解説】
2025.05.04

高級時計とひと口に言っても、その価格帯は実に幅広く、10万円台のエントリーモデルから、数百万円、さらには数千万円を超える超高額モデルまで存在します。
そんな高級時計ですが、
「値段が高い=壊れにくい」と思っていませんか?
実はそうではありません。
そもそも高級時計は、自動巻きや、手巻きとも呼ばれる、「機械式時計」がほとんどです。機械式時計は熟練の職人が丁寧に手作業で、歯車などを組み上げながら作っています。
この高級時計の扱いは、日常的に使う「道具」というより、「工芸品」や「美術品」に近しい物を感じます。そのため、見た目に反して非常にデリケートで、日々の使い方や保管方法を誤ると、不具合や劣化を招いてしまうこともあります。
つまり、高級時計は
「高いから頑丈」はなく、「高いからこそ繊細」なのです。
そしてこの繊細さを理解し、正しく保管できるかどうかで、いざ手放す際の買取価格にも大きな差が生まれます。
今回は、そんな高級時計を少しでも高く売るために知っておきたい「正しい保管方法」を、買取のプロの視点からわかりやすく解説します。
これから購入される方も、ご愛用中の方も、ぜひご参考になさってください。
オーバーホール(分解洗浄)は「定期検診」

高級時計を長く使い続ける上で欠かせないのが「オーバーホール(OH)」です。
オーバーホールとは、ムーブメント(内部の機械)を分解し、洗浄・注油・摩耗した部品の交換などを行うメンテナンスのことです。これにより精度を保ち、トラブルを未然に防ぐことができます。
推奨される頻度はおおよそ3〜5年に一度で、費用はブランドや店舗によって差がありますが、正規店では5〜10万円前後、非正規店では3〜5万円ほどが目安です。
尚、パテックフィリップやオーデマピゲなどの「世界五大時計」ブランドの一部モデルでは、オーバーホールだけで20〜30万円かかることもあります。
誤解のないようにお伝えしておくと、今回の内容は「メンテナンスなしでも安心」という話ではありません。高級時計は、車でいえば車検のように、定期的な整備が必要な精密機械です。
その上で、日頃の取り扱いにちょっとした気配りを加えることで、より長く、そして美しい状態で愛用できるヒントをお伝えします。
高級時計の正しい置き方とは?

大切な機械式時計を長く愛用するためには、日常的な置き方にも気を配ることが大切です。間違った置き方を続けてしまうと、見た目のキズだけでなく、内部のムーブメントにも影響を及ぼす恐れがあります。
ここでは、時計を保管する際に押さえておきたい基本的な置き方のポイントをご紹介します。
文字盤を上にして平置き

一般的な置き方としてよく見られるのが、文字盤を上にして平らな場所に置く方法です。特に問題はありませんが、裏蓋やバックル部分が接地するため、小さな擦りキズが付く可能性があります。
また、勢いよく「ガチャッ」と置いてしまうと、外装だけでなく内部のムーブメントに衝撃が加わり、精度に影響を与えることもあります。そっと置くように意識し、可能であれば柔らかいクロスやトレーの上に置くとより安心です。
リューズを上向きにする

リューズ(時間を調整するつまみ)を上にして立てかけるように置く方法は、買取店や販売店でもよく採用されている保管方法です。
この置き方はリューズ部分への余計な負荷がかかりにくく、キズもつきにくいというメリットがあります。また、時計を安定して置きやすく、見た目もスマートです。
向きを変えて保管する
機械式時計はさまざまな姿勢での使用を前提に設計されており、ずっと同じ向きで置き続けると、日差(1日あたりのズレ)に偏りが出る場合があります。そこでおすすめなのが、日によって置き方を変えて保管する方法です。たとえば今日は文字盤上向き、明日はリューズ上向きといったように、姿勢をローテーションさせることでムーブメント内部の油の偏りや歯車の負荷を均一にし、精度の維持につながりおすすめです。
point
- 日差は±20秒以内であれば正常範囲とされています。
磁気を避ける

時計の内部には鉄製の部品が多く使われており、磁気の影響を受けやすいという特性があります。磁気を帯びると精度に狂いが生じる恐れがあるため、保管場所には注意が必要です。
スマートフォンやパソコンといった電子機器の近くに置く場合は、5cm以上離せばほとんど問題ありませんが、電子レンジのように強い磁気を発する家電製品のそばには置かないようにしましょう。
万が一、磁気の影響を受けたと感じた場合は、磁気抜き(脱磁)という処置を行うことで元に戻せるケースもあります。
磁気抜き(脱磁)とは?
時計が家電製品などの電磁波の影響で磁気を帯びてしまうことを「磁気帯び」といい、これにより時刻がズレることがあります。磁気抜き(脱磁)はその磁力を取り除く処置です。時計専門店で数分ほどで対応してもらえます。
ケースに入れて保管する

保管ケースを使うのも有効な方法です。クッション付きのケースであれば、平置きよりもキズがつきにくく、安心して保管できます。
ただし、使用後すぐに収納する場合は、皮脂や汚れを乾拭きしてから入れるのが鉄則です。汚れが蓄積すると金属や革ベルトの劣化につながる恐れがあります。
ワインディングマシーンは必要?

「ワインディングマシーン(自動巻き上げ機)」について質問を受けることが多いですが、一般的な機械式時計にとっては必須ではありません。
むしろ、必要以上に巻き上げ動作を繰り返すことで、ゼンマイやパーツの摩耗リスクを高めてしまうこともあるので、使用する際は注意が必要です。
ただし、パーペチュアルカレンダーなどの複雑機構を備えた時計の場合、機能の維持のためにワインディングマシーンを活用したほうが良いケースもあります。
そのようなモデルは、パテックフィリップやランゲ&ゾーネといった超高級ブランドのハイエンドモデルなので、販売時にブランド側が付属品としてワインディングマシーン付きの箱を用意してくれる場合が多いです。購入時に販売店からの説明もあると思いますので、その指示に従うのが確実です。
リューズ操作で故障を防ぐための注意点

高級時計の取り扱いでは、リューズ操作が故障やトラブルの原因になることがあります。特に以下の3つのポイントは、日常の使用でも意識しておくことが重要です。
ハック機能で長時間止めない
リューズを引き出すと秒針が止まる「ハック機能」は、時刻合わせのための便利な仕組みです。ただし、止めたまま長時間放置すると、ムーブメントに負担がかかることがあります。時計を一時的に止めたいときは、ゼンマイが自然にほどけて止まるのを待つ方が安心です。
日付操作の禁止時間帯
夜8時~朝4時頃までは、内部で日付が切り替わる準備をしている時間帯です。この時間帯に手動で日付を合わせようとすると、歯車に二重の負荷がかかり、破損する恐れがあります。私自身、査定時などで操作する場合は、安全のために時刻を6時前後に合わせてから操作するようにしています。
時刻合わせで逆回転しない
時計のムーブメントは時計回りでの動作を前提に設計されています。リューズを逆方向に強く回すと、パーツに無理な負担がかかり、不具合の原因になります。時刻合わせは、必ず時計回りにゆっくりと行いましょう。
まとめ|時計は資産。正しい扱いで価値を守る
いかがでしたでしょうか?
高級時計は、精巧な技術と美しさが詰まった「持ち運べる資産」です。日常のちょっとした工夫で、その価値をより長く保つことができます。
retroでは、ブランド品や時計の買取サービスを行っております。
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この記事を書いた人